キ・セ・キ ep.3-32
★♪♯♭☆♪♯♭☆♪♯♭♪♯♭☆♪♯♭★
いつの間にか、眠っていた。
賑やかだった隣の部屋も静まり返っている。
あどけない寝顔を浮かべるチャンミンにそっと口づけ、起こさぬようベットから立ち上がった。
扉を開いて覗いてみるも、誰もいない。
テーブルの上にあったお皿も綺麗に片づけられていた。
おそらく、ヘソンだな。
結構酔っぱらっていたみたいなのに、片づけてから帰るなんて。
ちょっと予想外。
「ゆの…?」
振り返れば寝ぼけ眼を擦りながら佇んでいたチャンミンがいた。
「ゴメン、起こしちゃったか?」
問いかければコクリと小さくうなずき、腕の中に自ら進んでやってくる。
「ゆのがいないとねれないです…」
可愛い…っ。
なんか日増しに変態度数が上がっている気がする。
いたいくらいに頬ずりして、キスの雨を降らせてやった。
喜びのあまり。
「もう1回寝ような?」
「うん…」
なにしろ深夜3時。
起きるには早すぎる。
もう一度ベットへもぐりこみ、目を閉じればすぐに意識は遠ざかった。
オレ的には一瞬のことだったんだけど、気づいてみれば7時。
アラームがけたたましいほどに鳴り響いている。
「ん…」
もう少し寝たいような、寝たくないような。
とりあえずアラームを止めて、腕の中にいるチャンミンを見つめた。
「もうあさですか…?」
「みたい」
時間っていうのは、無常だ。
どんな時でも変わらぬ速度で時を刻み続ける。
悲しいときも、楽しいときも。
決して左右されることなく。
「シャワー浴びような?」
「はいです…」
まだ眠たそうだ。
とはいえ、オレは仕事。
もうちょっと寝る?などとは聞けない。
できれば一緒に朝ごはんを食べたいというのもあって。
あたたかいシャワーで揺り起こし、だんだんと瞳に生気が宿っていく。
シャワーを浴び終えるころには元気いっぱいだ。
「朝ごはんです!」
ふと、昨日寝る前に考えていたことが頭をよぎる。
やっぱり、心と胃袋は直結してないと思う。
多少の影響はあるけど。
支度をしながらそう結論を出し、チャンミンの元へと向かった。
「今日はクッパ?」
「はい!きっと、チュンジェたち二日酔いでヘソンの部屋に転がってるです~」
なるほど。
二日酔いを見越してのメニューか。
「いい子だな」
頭を撫でてやれば目を細め、嬉しそうに微笑む。
気持ちいいみたいで、されるがまま。
動こうともしない。
もっとって催促されているような気がして、ひたすら撫で続けた。
でも、それだけじゃ足りるわけもなく、結局はキスしてる。
キリがないと思いながらも。
「チャンミナ、とりあえず食べよう?続きは夜な?」
「我慢するですっ」
気合十分?
そういうところも可愛いんだよな…。
だから、最後にもう1回キスしといた。
ようやく席について、向かい合っての朝食。
「うん、うまい」
やっぱりチャンミンの手料理は最高だ。
幸せだし、元気出るし。
もう、チャンミンの朝食なしには1日が始まらないっていうくらい。
「いっぱい食べるです!」
「おう」
なにしろ、一番デカイ給食用みたいな鍋に作られている。
ほとんどはチャンミンの胃袋に消えるが、ヘソンたちの分くらいは残るだろう。
たぶん。
じゃないとクッパにした意味ないし。
とりあえずオレも朝から丼に2杯のクッパを食べ、出発準備。
準備と言っても歯を磨くくらいだけど。
残った時間はチャンミンを抱えて1日分の活力を充電。
たった数時間だけど、それでも離れ難い。
それもいつものこと。
チャンミンを抱きしめている間も淡々と時間は過ぎ、あっという間に出発する時間となった。
「じゃあ、行ってくるな?」
「うん。今日も早く帰ってきてくださいね?」
「もちろん」
出かけ間際、もう一度キスをして部屋を出た。
自転車に手をかけながら隣の部屋の様子をうかがってみるも、扉の向こうのことまではわからない。
起きてくるのは昼過ぎかな…。
っていうか、ホントにチュンジェたちもいるのかな?
チャンミンが言うからたぶんそうなんだろう。
でも、帰ったっていう可能性もある。
チャンミンのクッパが無駄にならないといいんだけど。
「…」
いや、無駄にはならないか。
オレが帰ってくるころには間違いなく跡形もないはず。
ようは、誰の胃袋に入るかっていうだけで。
とりあえずと自転車を押してマンションを出て、一路店へと向かって発進。
いまの季節はいいけど、もう少しすると地獄だななんて思いながら。
渋滞する車をすり抜けながら店へと到着し、いつものように解錠。
少し休んでいると他のスタッフもやってきて、号令もなく開店準備を開始した。
もう、誰が何をやるってわかっているから楽なもんだ。
台帳で今日の予約を確認し、簡単にタイムスケジュールを立てる。
今日は落ち着いたもんだ。
ほぼ間違いなく定時上がりで行けそう。
今日は早く帰って、チャンミンと…なんて親父くさいこと考えながら仕事へ勤しめばあっという間に定時。
誰よりも早く店を出て、自宅へ。
「ただいま~」
そう声をかければパタパタと足音が聞こえてくる。
駆け寄ってくるのはいつものことだが、その姿に驚き。
思わず、靴を脱ぐのが中途半端になってしまうほど。
「チャ、チャンミナ!?」
「おかえりです~っ」
いったいどうした?
何があった?
「どうですか?似合うですか?」
オレの目の前にいたのは、携帯電話に保存されているあの写真と全く同じ格好をした人。
肩まである少しブラウンのセミロングで、紅いロングドレスをまとって。
しかも、メイクまでばっちりじゃないか。
「ミノに聞いたら、この格好が一番喜ぶって言ってたです!」
ミノ…グッジョブっ。
まさか生で拝める日が来るなんて、思いもしなかった。
「チャンミナ、火は?」
「え?火?」
あの時と同じ轍を踏むわけにはいかない。
チャンミンを抱え上げてキッチンへと向かい、コンロの火を切る。
そして、そのままベットルームへと向かった。
「ユ、ユノ?」
「そんな格好見せられて、我慢できるワケないだろ?」
だって、理想そのものなんだ。
この姿のチャンミンに一目惚れしたって言っても過言じゃない。
ベットへ押し倒せば、深いスリットから細くて白い足がこぼれる。
「わ、わ、わ…っ」
撫でるようにたくし上げ、下着だけを抜き取った。
しかも下着はこの前一緒に買いに行ったバンビの顔がプリントされたヤツ。
これはもう、おいしくいただくしかない。
チャンミンだってそのつもりのはず。
絶対、確信犯だ。
こればかりは違うって言っても認めないぞ。
「ユノ、ごはんっ」
「後でな?」
ごはんは食べたいけど、とりあえずこっち。
とてもじゃないけど我慢できない。
ムリ。
それもこれも、チャンミンがいけないんだ。
こんな格好してるから。
なんか、チャンミンの手の上で踊らされてるカンジがするなぁ…。
まぁ、仕方ない。
惚れた弱みというヤツだ。
to be continued.
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