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雪・月・花

腐女子による腐女子のための、東方神起妄想小説サイト。ホミン・ミンホどっちも有です。

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シアワセ色の花 52

シアワセ色の花



シアワセ色の花 52




★♪♯♭☆♪♯♭☆♪♯♭♪♯♭☆♪♯♭★



相当疲れているんだろうな…。

そばにいるからこそわかる。

ベットに入るなり速攻で眠ってしまうし、だんだんと寝起きも悪くなっているような。

夜のバイトを減らしているから少しはマシだろうが、それでもキツイと思う。

朝は8時前から仕事して、帰ってくるのは22時頃。

完全に過重労働だ。

でも、責任感の強いユノはなんとかしようとする。

この状態では辞められない、お世話になった分できる限りのことはしたい、と。

おかげでまともにレッスンも出られない。

申請はまだ通っていないが、見学と称して参加させてもらっている。

休みの日、限定で。

とはいえ疲れ切っている身体では思うように練習も捗らない。

そんな自分に腹が立つようで、イライラしていることも多々ある。

とはいえ、誰かに当たるというような真似はしない。

それどころか謝ってくる始末。

迷惑をかけてゴメン、と。

謝る必要なんか、全くないのに。

それよりも、無理はせずに休んでほしい。

いまは。

もちろん、リミットはその分差し迫っては来る。

でも、大事なのはユノだ。

何かあってからでは遅すぎる。

けれど、ゆっくり話す時間もない。

一緒の家で暮らしているというのに。

「チャンミニひょん」

「うん?」

「ユノひょんから連絡があって、集荷が19時半くらいになるそうです」

「ホント?」

やっぱり、相当仕事が忙しいんだ。

たぶん、僕が思っている以上に。

「じゃあ…僕が残ってるから、上がって?」

「でも…」

「ユノのために、精力つくもの用意しておいてくれないかな?きっと、またお昼も食べられてないだろうし」

きっと、そうだ。

ちゃんと食べてと言ってるんだけど、時間がもったいないからと。

お金に余裕ができてもスタイルは変わらないらしい。

「ミノ?」

「え?あ、す、すみません!了解しました!おいしくて、精力つくもの用意しておきますっ」

「うん、お願いね?」

すでに就業時間は過ぎている。

僕とミノ以外はすでに退勤済だ。

ミノも集荷待ちで残っているだけの状態。

それなら、僕が残っていればいい。

まだ仕事もあるし。

「じゃ、お先に失礼します!」

「うん、お疲れ様」

ミノを見送り、ひとりとなった事務所内。

時計を見れば18時を少し過ぎたところだった。

ユノが来るまで1時間以上ある。

少し休憩して、コーヒーでも飲もうかな?

残っている仕事もおそらく1時間かからないだろうし。

カップコーヒーを購入し、20分ほど休憩。

それからデスクに戻って仕事へと勤しんだ。

仕事を終えると19時20分。

あともう少しかな、と帰り支度をしながらユノの到着を待った。

しかし、19時半を過ぎても、20時になっても、ユノが現れない。

「…」

何か、あったのか…?

芽吹いた不安。

連絡先一覧からバイク便の事務所の電話番号を探しだし、受話器を取った瞬間だった。

「遅くなりました!」

駆け込んできた人は焦った表情でそう告げた。

しかし、ユノではない。

前にこのエリアを担当していた人だ。

「あの…チョン・ユンホさんは…?」

「そ、それが…」

嫌な予感が一気に膨れ上がる。

「さっき、事故に遭って…いま病院に…」

「どこの病院ですか?」

「K大附属病院と聞いてます」

いても立ってもいられなかった。

まとめておいた荷物と、上着を手に事務所を飛び出し、車へと乗り込んだ。

すぐさまエンジンをかけて、教えてもらった病院へ。

緊急外来と書いてある扉から中へと進み、偶然廊下を歩いていた看護師へと声をかけた。

「あ、あの、こちらにチョン・ユンホという人物が緊急搬送されてきたと思うんですが…」

「その方ならいま手術中ですよ?ご案内します」

手術という言葉に血の気が引いた。

最悪の事態を想像して。

冗談じゃない。

ユノを失うなんて、そんなこと…。

恐怖に蝕まれ仲らも看護師の後に続き、銀色の扉の前へとやってきた。

扉の脇にソファが設置されており、そこには男性がひとり。

着ていたジャケットの胸部分に刺繍された文字から、ユノの勤める会社の人間であることはわかった。

「こちらでお待ちください」

どれくらいかかるのだろうか…。

傷の度合いは?

そもそも何があったんだ?

「失礼ですが…」

「私、シム・チャンミンと申します。いま、ユンホさんと一緒に暮らしている者です」

「あぁ…、あ、申し遅れました。私、上司になりまして…」

そんなことはどうでもいいと思いながらも差し出された名刺を受取った。

生憎、そんなものは持ってきていない。

家に帰るつもりのまま、ここへ来たのだから。

「いったい何が起こったんですか?」

「…飛び出してきた女の子を避けて転倒したようです。かなりスピードが出ていたようでそのまま反対車線に飛び出して、対向車と…」

耳を塞ぎたくなるような話。

しかし、現実だ。

できれば夢であってほしいけれど。

「女の子は、無傷だそうです。赤信号を飛び出してきたと、目撃証言もあって…。ただ、スピードが規定よりも出ていたので、過失は多少なりともあると」

「…」

「また、接触した車が運悪く高級外車で…」

「保険」

「え…?」

「もちろん、保険は入ってるんですよね?対物無制限で」

会社なのだから、保険加入は必須だ。

入っていない業者など、ブラック企業に等しい。

「そ、それが…」

「入っていないんですか?」

「…」

なんということだ。

ありえない。

そんなところにユノは勤めていたなんて。

「過重労働を押し付けた上に、事故の賠償まで押し付けようなんてことはないですよね?」

「…」

青ざめていく男の顔。

それは、僕が語った内容が正しいことを物語っていた。

疑いようもなく。

「会社として、責任を取っていただけるんですよね?」

「そ、それは…」

これ以上ユノに負担を背負わせるわけにはいかない。

絶対に。

ようやく借金から解放されたのに、また金銭的負担を強いるなんて。

「お帰り下さい」

「…」

「今後は弁護士を通してお話しさせていただきます」

これ以上シウォンに借りは作りたくないが、状況が状況だ。

ユノのためにも、頼るしかない。

後で連絡をしておこう。

とりあえず、手術が終わるのを待って、無事なユノを確認したら。

あぁ、そうだ。

ミノにも連絡をしないと。

ソファへ腰を下ろし、混乱する頭でやるべきことを並べる。

順序立てて、ミスや漏れがないように。

こんな時だからこそ慎重に。

いつしか手術室の前には僕ひとりきり。

しんと静まり返ったそこは、足音ひとつ聞こえない。

ただ、血をほうふつとさせる赤いランプがぼんやりと浮かんでいた。



to be continued.







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